Jounal

room705

2023.04.28

歩きやすさとリラックスの極限へ 「MATOI」

room705の中でも不動の人気を誇る「MATOI」。軽さと歩きやすさを兼ね備えるこだわりのスリッパは、兵庫県たつの市という、約130件ものタンナーが集うmade in Japanレザーの一大産地でつくられています。1974年創業の松岡皮革も、そんなタンナーの一つ。松岡皮革の・・・・さんに、こだわりを取材しました。

依頼を受けた時の心境は?

 

「架空のホテルの一室というコンセプトを聞いたとき、面白い取り組みだと思いました。そこで使われるレザーアイテムで、私たちのレザーを使うというのはイメージにあっているなと。タンナーの仕事って一般的にはあまり知られていませんが、簡単に言うと、皮を革にすること。動物の皮を腐らないように、柔らかく加工し、皆さんが目にする革製品に使われる“革”にしていく。この過程を“鞣し(なめし)”といい、革の品質を決める重要な役割なんです。レザー生産はこのタンナーによって行われます。色や、艶や、柔かさといった革の品質はタンナーの生み出す技術によって変化します。

わたしたち松岡皮革は、その中でもやわらかい革を得意とし、なめし、染色、加脂など、すべての工程において独自のノウハウを持っていて、この柔らかい革は、ありがたいことにさまざまなブランドからお声かけいただいていて、パリコレクション・ミラノコレクションなどの常連であるハイブランドからも依頼があります。」

兵庫県たつの市。おそらく日本ほとんどの人が耳にしたことがない地方都市。しかし、この街には特別な顔がある。約130件ものタンナーが集まるmade in Japanレザーの一大産地なのだ。揖保川の支流としてたつの市を南北に走る林田川。滔々と流れるこの川沿いの沢田地区には、かつて手袋用の革を製造する皮革工場が集積していた。

MATOIの特徴は?

「MATOIシリーズに使われているカーフレザーは、わたしたちの得意な“柔らかさ”が特徴のレザーです。生後6ヶ月未満の仔牛の皮のことを、カーフレザーと呼び、柔らかさが出る分、表面が非常に繊細でとても扱いづらく、原皮と呼ばれるレザーの原料の段階で市場への流通が極めて少ないんです。加えて、仔牛であるため成牛と比べるとサイズが小さく、成牛の1/4程度のサイズしか製品にはならない。原皮全体の3~5%程度とも言われており、非常に希少性が高いレザーでもあります。

このカーフレザーを柔らかく、美しく加工する技術力を持っているタンナーは日本でも数が少ないと思います。様々な色に染めて染色し、あらゆる革のバリエーションをつくる。中途半端な加工技術では、この希少性の高い素材の魅力を最大限引き出すことはできないんです。

カーフレザーは、1回の工程で多くの量が取れるものではないのである種、生産性という点で見れば真逆です。けれど、そこで他がやらないことに挑戦するからこそ、選ばれるタンナーになれる。そう信じて、技術力を高めてきたのです。『他がやらないことを、やる』これは私たちのずっと大切にしているコンセプトです。」

 

松岡皮革のこだわりとは。

「わたしたちは、革の本質を最大限引き出すために、『素上げ』と呼ばれる仕上げにこわだりを持っています。『素上げ』とは、ワックスやオイルなどの表面加工を施さず、人で言う素肌やすっぴん肌の状態で美しく仕上げる工法のこと。革独特の表情を残したまま仕上げるため、革を生かした工法です。ワックスやオイル、着色剤などで化粧をできないため、この『素上げ』の加工は本質的な鞣す工程での力量が試されると思っています。松岡皮革では洗い、乾燥、など工程ごとのPh(酸性度合い)の調整などはもちろん、柔らかく仕上げためには湿度管理を徹底し、干しあがった際に、湿度を担保して革に取り入れる。そうすることで、柔らかく素肌やシルクのような触り心地をひきだすことができるのです。

 革に加工をすればそれらしく魅せることはできるけれども、やはり、その革の本来の魅力を最大限に引き出すことが重要だと思います。私たちのポリシーは『革を生かす』こと。独自の風合いをうまく引き出すことなのです。それができれば唯一無二の素材が生まれる。これは、タンナーとしての醍醐味です。」




MATOI

room705のレザーシリーズ。ルームシューズ、ポーチ共に、松岡皮革のレザーを使用。ルームシューズは牛革の吟スリ(銀磨り)を使用。あえて光沢を消し、マットに仕上がっていることが特徴。革本来のキメの美しい“銀面模様”をそのままに生かした仕様に。ポーチはカーフレザーの素上げを使用。キメが極めて細かいため柔らかく、肌触りはとてもなめらか。しっとりとした質感と肌目の美しさが特徴。

商品の詳細はこちら https://room705.jp/matoi_roomshoes

松岡皮革
1974年創業。日本産の原料を加工、販売。ソフトで柔らかな革を得意とする。伝統の技術を踏まえながら、新しい技術開発にも積極的に取り組み、業界での独自ポジションを築いているタンナー。